悪質なマルチ商法のセミナーに乗り込み、参加者の目の前で勧誘の問題点を追及する。
そんな動画で人気を集めてきたのが、YouTuber「新宿109」のKENZOである。
自らもマルチ商法に引っかかった経験を持ち、社会的な弱者を狙う悪徳商法を追及する姿勢は、多くの視聴者から支持されてきた。
しかし、2026年10月14日、KENZOは名誉毀損の疑いで京都府警に逮捕された。
問題となったのは、これまで主に扱ってきたマルチ商法ではない。京都と岡山の企業間で起きた、巨額のM&Aをめぐるトラブルだった。
しかも、この事件では別の会社関係者2人が30億円を要求した恐喝未遂容疑で逮捕され、動画で追及された男性はすでに亡くなっている。
詐欺撲滅を掲げて活動してきたKENZOとは、どのような人物なのか。
その生い立ちから活動の軌跡を振り返り、今回の逮捕に至った経緯を整理する。
- KENZO(新宿109)とは何者か|本名・年齢・出身地
- 10歳から児童養護施設で育った少年時代
- マルチ商法に引っかかった過去|60万円を支払った経験
- 詐欺撲滅YouTuberとしての活動
- マーケットピーク事件|KENZOの活動が広く知られる転機
- なぜKENZOの活動は評価されていたのか
- 2026年10月14日、KENZOが名誉毀損容疑で逮捕
- 問題となったのは20億円規模のM&Aをめぐる動画
- 岡山の会社関係者2人も逮捕|30億円の恐喝未遂事件
- 動画を公開しても脅しの材料になるのか
- 追及された男性は動画公開の翌月に死亡
- KENZOは30億円の要求を知っていたのか|二つの仮説
- まとめ|詐欺撲滅を掲げたKENZOは、なぜ逮捕されたのか
KENZO(新宿109)とは何者か|本名・年齢・出身地
KENZOは、悪質なマルチ商法や投資詐欺の疑いがある事業者などを追及するYouTuberである。
本人の著書や逮捕報道によるプロフィールは次のとおりだ。
- 本名: 池田実貴
- 生年月日: 1998年7月16日
- 年齢: 28歳(2026年10月現在)
- 出身地: 三重県伊賀市
- 学歴: 短期大学卒業
- 経歴: 会社員を経て専業YouTuberへ
- 活動名: KENZO(新宿109)
- YouTube登録者数: 約103万人(2026年10月の報道時点)
短大卒業後は会社員として約2年間勤務。その傍らでYouTubeチャンネルを立ち上げ、後に動画配信を本業とするようになった。
KENZOを理解するうえで欠かせないのが、その幼少期である。
10歳から児童養護施設で育った少年時代
KENZOは、自身の著書『突撃! 新宿109 詐欺・悪徳マルチ撲滅活動日記』で、生い立ちについて詳しく語っている。
生まれ育ったのは、母親と姉との3人暮らしの家庭だった。
母親は体調を崩して十分に働くことができず、生活保護を受けながら暮らしていた。
食事にも困ることがあり、幼少期のKENZOは経済的に厳しい生活を送っていたという。
小学校では教師に反抗することもあり、不登校も経験した。
そして小学4年生、10歳のときに姉とともに三重県津市の児童養護施設へ入所した。
野球と施設職員の支え
施設に入ったKENZOは、規則正しい生活を送るようになる。
毎日食事を取れること、学校へ通えること、面倒を見てくれる大人がいること。
それまでとは異なる生活環境の中で、徐々に落ち着きを取り戻していった。
小学6年生からソフトボールを始め、中学、高校では野球部に所属した。
高校では最後までレギュラーになれなかったものの、厳しい練習を続けたことが自身の成長につながったと振り返っている。
一方、高校時代には児童養護施設で生活していることに引け目を感じ、周囲に隠していた時期もあったという。
それでも、現在は施設を自分の第二の故郷と考え、当時の職員や仲間との交流も続けていると著書で明かしている。
高校卒業後は施設を出て、短期大学の夜間部へ進学した。
マルチ商法に引っかかった過去|60万円を支払った経験
KENZOが悪質なマルチ商法を追及するようになった背景には、自身が勧誘を受けた経験がある。
短大時代、KENZOはアルバイト先を辞めることになり、新しい収入源を探していた。
そこで興味を持ったのが投資やFXだった。
インターネットなどで投資について調べていたところ、知人から稼いでいる人物を紹介される。
名古屋で会った相手は、KENZOと同年代の若い男性だった。
相手から高収入を得られるという話を聞き、ハワイの不動産投資に関するビジネスへ勧誘される。
当時のKENZOは、その説明を信じてしまった。
そして、アルバイトで貯めた60万円を相手に手渡したのである。
60万円のうち40万円を取り戻した
その後、参加したセミナーの雰囲気に違和感を覚えたKENZOは、野球サークルの先輩に相談した。
先輩から詐欺の疑いを指摘され、契約を確認したところ、早期解約による返金制度があることが分かった。
最終的に60万円のうち40万円を取り戻したが、20万円は返ってこなかったという。
KENZOはこの経験を通じて、悪質な勧誘の手口を自分自身の問題として知ることになった。
ただし、この経験だけですぐに詐欺撲滅YouTuberになったわけではない。その後もマルチ商法の世界との関わりを経験し、やがて追及する側へと転じていった。
詐欺撲滅YouTuberとしての活動
KENZOの動画の特徴は、疑惑のある事業者やマルチ商法のセミナーへ自ら足を運び、その場で直接質問をぶつけることである。
一般的な注意喚起動画とは異なり、実際の勧誘現場で交わされる会話を映像として記録してきた。
高額な情報商材、投資話、暗号資産を利用したマルチ商法など、その対象は多岐にわたる。
特に、若者が高収入への期待を抱いて勧誘される構図を繰り返し取り上げていた。
もちろん、マルチ商法という販売方式がすべて違法なわけではない。
KENZOが問題視してきたのは、虚偽や誇大な説明、違法な勧誘行為など、消費者に不利益をもたらす手法だった。
動画には過激な言動もあり、手法については賛否が分かれていた。
それでも、悪質商法の実態を一般の視聴者に分かりやすく伝えるという点で、KENZOの活動は一定の役割を果たしていた。
マーケットピーク事件|KENZOの活動が広く知られる転機
KENZOの知名度を大きく高めたのが、2023年のマーケットピーク事件である。
マーケットピークは、暗号資産への投資をめぐるマルチ商法で、多くの大学生らを勧誘していたグループだった。
2023年5月、違法な勧誘に関与した疑いで関係者9人が逮捕された。
報道によると、グループは約2500人から7億7000万円以上を集めていたとみられている。
KENZOは、それ以前からマーケットピークのセミナーに潜入し、勧誘の実態を撮影していた。
事件はテレビでも大きく取り上げられ、KENZO自身も取材を受けることになった。
ここで注意したいのは、KENZOの活動だけによって逮捕が実現したと断定することはできない点である。
本人も過去のインタビューで、警察の捜査と直接連動していたわけではないと説明している。
しかし、彼が撮影した映像が実態を社会に知らせる材料となったことは確かだ。
この事件をきっかけにチャンネル登録者が急増した。
KENZOにとって、活動が社会的に認知される大きな転機となった事件だった。
なぜKENZOの活動は評価されていたのか
KENZOの支持が広がった背景には、単なる動画の面白さだけではないものがある。
悪質商法の被害者は、契約内容を十分に理解できなかったり、相手から言いくるめられたりして、泣き寝入りすることも少なくない。
そこへKENZOは実際に足を運び、相手の説明の矛盾を追及する。
視聴者は、自分ではできないことを代わりに実行する姿に痛快さを感じていたのだろう。
また、被害者から相談が寄せられることも増えていた。
多い月には約460件の相談が届き、スタッフとともに内容を確認していたと明かしている。
一方で、活動が大きくなるほど、別の問題も生まれる。
YouTubeは再生回数や注目度が収益につながる仕組みであり、刺激の強い動画ほど視聴されやすい。
KENZOも動画の収益化については肯定的な立場を取っており、公益的な活動と収益を得ることは矛盾しないと主張していた。
その考え方自体は、必ずしも間違いではない。
ただし、相手を追及する動画が大きな影響力を持つようになれば、発信内容の正確性や取材の公正さにも、それだけ大きな責任が伴う。
そして2026年、その問題が現実の事件として浮かび上がった。
2026年10月14日、KENZOが名誉毀損容疑で逮捕
京都府警左京署は2026年10月14日、KENZOこと池田実貴容疑者を名誉毀損の疑いで逮捕した。
問題となったのは、2025年6月にYouTubeへ投稿された動画である。
動画では、京都市の不動産会社で代表を務めていた男性について、詐欺師であるかのようなテロップを表示し、組織的な犯行があったとする趣旨の発言をしていたとされる。
KENZOは逮捕後、弁護士と相談してから話すとして、認否を留保している。
無論、逮捕は有罪判決を意味するものではない。
問題となったのは20億円規模のM&Aをめぐる動画
問題とされた動画は、2025年6月14日に公開されたものとみられている。
当時の動画タイトルは「【20億のM&A】巨額な資金を略奪した特別背任容疑の会社役員に突撃してみた!!」だった。
動画配信記録によると、長さは約47分である。
映像は京都の元代表らと、株式譲渡先となった岡山市の会社側との協議の様子を撮影したものだった。
KENZOは岡山市の会社側の主張をもとに、元代表らを追及していた。
ここが、これまでの悪質マルチ商法への突撃と大きく異なる点である。
今回の動画は、企業同士の株式譲渡をめぐる紛争に関わるものだった。
企業間の紛争では、契約内容や資金の扱いなどについて、双方の主張が対立することがある。
その一方の主張をもとに相手を犯罪者と表現するのであれば、単なる不正の告発とは異なる問題が生じる。
岡山の会社関係者2人も逮捕|30億円の恐喝未遂事件
今回の事件が複雑なのは、KENZOだけが逮捕されたわけではないことである。
京都府警は同じ10月14日、岡山市の不動産会社代表である赤木誠容疑者(46)と安田裕貴容疑者(35)を恐喝未遂の疑いで逮捕した。
2人は、京都の元代表の男性に対し、KENZOによる動画公開をほのめかすなどして、30億円を要求した疑いが持たれている。
報道では、金銭要求は2025年5月に行われたとされる。
一方、問題の動画が公開されたのは翌6月だった。
つまり、動画の公開を材料に巨額の金銭が要求され、その後に実際の動画が公開されたという時系列になる。
赤木、安田両容疑者は、問題となった動画にも登場していた。
ただし、30億円をどのような名目で要求したのかは、確認できていない。
また、KENZOが30億円を要求したとして逮捕されたわけではない。KENZOの逮捕容疑は名誉毀損であり、2人の恐喝未遂容疑とは区別する必要がある。
動画を公開しても脅しの材料になるのか
一つ疑問が残る。
もし動画を公開すると脅して30億円を要求していたのであれば、実際に動画を公開してしまうことで、交渉材料を失うのではないか。
しかし、必ずしもそうとは限らない。
最初の動画を公開すれば、相手に対して実際に行動する意思を示すことになる。
その後も追加の動画公開などを材料に、さらなる圧力をかけることは理論上可能である。
もっとも、今回の事件で実際に公開後の金銭交渉が行われたことを示す情報は、現時点では確認できていない。
動画の公開が金銭要求への対応として行われたのか、別の判断によるものだったのか。
その点は今後の捜査で明らかにされるべき問題である。
追及された男性は動画公開の翌月に死亡
さらに、この事件には深刻な経緯がある。
動画で追及された京都の不動産会社元代表の男性は、2025年7月ごろに亡くなっている。
男性は当時36歳だった。
遺族によると、自ら命を絶ったとされる。
男性は生前、京都府警に相談しており、その後、母親が告訴した。
今回の逮捕は、この告訴を受けた捜査の結果である。
時系列は次のようになっている。
- 2025年5月:岡山の2人が動画公開をほのめかし、30億円を要求した疑い。
- 2025年6月14日ごろ:KENZOが実際に動画を公開。
- 2025年7月ごろ:追及された男性が死亡。
ただし、男性の死亡と動画公開との因果関係が確定したわけではない。
企業間の紛争、金銭要求、動画公開など、男性を取り巻いていた事情は複数ある。
この点については、憶測で結論を出すべきではないだろう。
KENZOは30億円の要求を知っていたのか|二つの仮説
今回の事件で、最も気になる疑問がある。
それは、KENZOが岡山の2人による30億円の要求を知っていたのかという点だ。
現段階では、二つの仮説が考えられる。
仮説① 金銭要求を知りながら動画を公開した
一つ目は、KENZOが30億円の要求を知ったうえで、動画の制作や公開に関わっていた可能性である。
仮にそうであれば、動画が企業間紛争の一方当事者による圧力として使われることを認識していた可能性が生じる。
しかし、KENZOが恐喝未遂の計画を知っていたことや、金銭要求に協力していたことを裏づける証拠は、現時点で公表されていない。
この仮説だけをもって、KENZOが恐喝に加担したと判断することはできない。
仮説② 知らないまま利用された
もう一つは、KENZO自身は金銭要求を知らず、岡山側から提供された情報を信じて動画を制作した可能性である。
これまでのKENZOは、被害の相談や情報提供を受け、疑惑のある人物や事業者を追及してきた。
今回も同じように、不正行為の情報提供だと受け止めていた可能性がある。
その場合、本人は不正を追及しているつもりでも、結果的に企業間紛争の一方当事者に利用されていたことになる。
ただし、事情を知らなかったとしても、名誉毀損の疑いが直ちに消えるわけではない。
相手を犯罪者として表現するだけの根拠があったのか、その情報をどこまで独自に検証していたのかという問題は残る。
もちろん、要求の存在を部分的に知っていたなど、二つの仮説の中間にあたる可能性もある。
また、京都の元代表側に実際に不正があったのかという点も、別に検証する必要がある。
まとめ|詐欺撲滅を掲げたKENZOは、なぜ逮捕されたのか
KENZOは、決して最初から大きな影響力を持つ人物だったわけではない。
経済的に苦しい家庭に生まれ、10歳から児童養護施設で生活した。
短大時代にはマルチ商法に引っかかり、アルバイトで貯めた金を失う経験もしている。
その後、悪質な勧誘の実態を追及する活動を始め、多くの支持を集めるYouTuberになった。
マーケットピーク事件などを通じて、悪質商法の危険性を社会に知らせてきた実績もある。
だからこそ、今回の逮捕には複雑なものがある。
どれほど社会的に意義のある活動をしていても、他人の名誉を傷つける行為が無条件に許されるわけではない。
そして、悪質商法を追及する人物が大きな影響力を手にしたとき、その力を利用しようとする第三者が現れる可能性もある。
今回の事件で問われているのは、動画の表現が適切だったかという問題だけではない。
KENZOは、どのような情報を受け取り、何を根拠に動画を公開したのか。
30億円の要求について、何を知っていたのか。
その答えは、まだ出ていない。
過去の活動が評価されていたからといって、今回の疑惑が消えるわけではない。
反対に、今回逮捕されたからといって、それまでの活動がすべて偽りだったことにもならない。
詐欺を追及してきた男が、今度は自らの行為を問われる立場になった。
KENZOが歩んできた道を考えるとき、今回の事件は単なる人気YouTuberの逮捕という話では終わらない。
今後の捜査によって、動画の背後にあった事情がどこまで明らかになるのか。
その行方を見ていく必要がある。
KENZOは2024年3月、彩図社から初の著書『突撃! 新宿109 詐欺・悪徳マルチ撲滅活動日記』を出版している。
児童養護施設で過ごした少年時代から、マルチ商法との出会い、動画配信を始めた経緯、悪質商法を追及する活動までを振り返った一冊である。
この著書は、現在Kindle Unlimitedの読み放題対象になっており、無料体験を利用して追加料金なしで読むことができる。
Kindle Unlimitedは、対象となる新規会員などが30日間無料で試せる電子書籍サービスである。
KENZOの生い立ちやマルチ商法に関わった経験、詐欺撲滅活動を始めた経緯に興味がある人は、この機会に読んでみてはいかがだろうか。
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